もう一つの不思議の国のアリス:第二章:奇妙なるお茶会

第二章:

奇妙なるお茶会




ベッドから起き上がろうとしたそのとき、突如頭上からふわふわと何かが落ちてきた。
それを拾い上げる。

表面に – TO boku – とボク宛。
裏面は -『♠️3』- と記されているカードだった。

——————————————-

TO boku

– 奇妙なるお茶会 – のお誘い

時間:0:00
会場:まず家から出ます。北へ、そのまま真っ直ぐに進む。
   それから南の方向に、そのまま真っ直ぐ進む。
   到着したところが会場となります。
   
白い トンガリ帽子より

——————————————-

不思議な招待状。
どうやらお茶会の誘いのようだった。

「時間は午前0時、間に合う…!」
早速、その封筒を握りしめ急いで扉に向かった。



お茶会のための器 左から

8.5 x 8.5 x 8 cm / 陶・エポキシ樹脂
8.5 x 9 x 8.5 cm / 陶・エポキシ樹脂
16 x 16 x 11 cm / 陶・エポキシ樹脂
8.5 x 8.5 x 8 cm / 陶・エポキシ樹脂
9 x 7 x 8 cm / 陶・エポキシ樹脂

すべて 山本 恵

外に出て扉を閉めたそのときだった。
目の前に白い巨大な三角の建物?が突如と現れたのだ。
白い巨大テントと言ったほうがわかりやすいかもしれない。
直径にすると30フィートくらい。
高さは仰ぐと空に届きそうなくらい、高い!
遠くからの客人にもこの場所だとすぐに見つけられるように?
『♠️3』の大きな立て看板が入り口に立て付けられていた。
「此処で間違いないようだ」

テント内に入り、、辺りを見渡しても人の気配はないのだけれど
ワイワイとあちらからもこちらからも声が聞こえる。
「ゲンキデシタカ~ ヒサシブリデスネ!」
「…アラ、マタイチダント オウツクシクナッテオラレマシタコト❤︎」
テント内はとても楽しそうに賑わっていた。

お腹が空いていることもあって
ひとまず目の前のテーブルに座った。
『♠️3』のマークの入った白いとんがり帽子が
空中でビュンビュン飛びながら回っているのをボクは目で追っていた。
下から覗いてみると円盤になっているモノははどうやら時計なんだと知った。
その時計は午前0時を指している。
「パーティーに間に合った」





「キミョウナル オチャカイ エ ヨウコソ ! 」

白いとんがり帽子はお菓子と紅茶をテーブルに次々へと置いていく。
置いたあとはすぐさま違うテーブルへ飛んで行った。

「キミョウナル オチャカイ ヘ ヨウコソ ! 」

白いとんがり帽子がまた叫んでいるのだ。
「アス コノモリデ オオキナパレードガアルヨ!イソガシイ、イソガシイ。
デモ トテモタノシミナンダヨ~」
「…パレードニサンカシタイヒトハ オチャカイデショウタイサレタヒトニ カギリマス~」




「奇妙なるお茶会」ティーセット

nokos à l’étage and SC









不思議の国のアリス フレーム付き額絵

ルーペ

ヴィンテージ新聞





お菓子を口に入れお茶を飲む、お茶を飲んでまたお菓子を食べる。
お菓子は甘くて優しくて食べたことのない美味しさだった。
ミントの香りを漂わせるお茶も、体の隅々までにまで美味しさが染み込んでいく。
「あ~美味しくてたまらない」
ホカホカ、キュンキュン、ホカホカ、キュンキュン。

お腹も満腹になったその時、不思議な感覚に襲われていた。

甘くてキュンキュンするクッキーが硬い木の実に姿を変え、
香りだけでも心がホカホカにしたお茶は、今は苦くて、苦くて、苦い。
そのどろりと緑色の液体がカップの底にべったりと張りついているのだ。
そして、
ボクの身体は椅子に座っているのに浮かんでいるようなふわふわする感触でいる。




mitsuru katsumoto

「study in green」


席を立ち、ボクはうちに帰ろうと歩きだす。
だけれどもアレレレ….歩けない。
どうしてもふわふわとスキップしているような動きになってしまう。
体も柔らかくなっていて
90度前にグニャリとかがむことも、頭を90度後ろに落とすことも容易にできる。

そう……ボクの体はペッタンコになってしまったのだ!

スキップして、ジャンプして、空中回転もお安い御用。
ビュンビュンと、とっても自由なんだ。
そんな動きを見ていた白いとんがり帽子が、口笛を吹きはじめた。
それはとてもリズミカルで爽快。
心が解放されていくのだ。

そのリズムに合わせて体が動いていく。
ボクは無性に踊りたくなってしまった。
ダンス、ダンス、ダンス。
愉快で笑いが止まらない。

時間は午前0時



戻る   進む




『もう一つの不思議の国のアリス』

序章:
第一章:目覚めたら、言語のない場所にいた
第二章:奇妙なるお茶会
第三章:不思議な植物『12』